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ふうりゅうたいへいき
風流太平記
山本 周五郎
「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页
ろよ」
外はいま黄昏であった。
暗くなった土堤の上に、澄みあがった夕空が高く見える。小屋が小さいので、中に坐っていても、その高い空に夕焼け雲のたなびいているのを、眺めることができた。
「又さん灯をいれてくれろや」
艫のところで夕餉の支度にかかりながら、友吉老人が云った。舟ばたを打つ川波の呟きに混って、やがてことことと庖丁の音が聞えはじめた。
万三郎は持物の包の中から、そっと刀を取出した。油皿に火をいれながら、斧田はまだ不得心そうに彼を見た。
「本当にでかけるんですか」
「日の昏れ刻だというでしょう。爺さんには然るべく云っておいて下さい、場合によっては帰りが延びるかもしれないから」
「私もいかなくっていいですか」
「斧田さんはこっちを頼みます」
万三郎は老人のほうを覗いた。
「つなさんが本当に檻禁されていて、そのためにあの女が来たんだとすると、かれらはつなさんをよそへ移すかもしれない、江戸へ伴れてゆくかもしれませんからね、――斧田さんはあの女には初めてだから、感づかれるようなことはないでしょう」
「その女だということが私にもわかるでしょうか」
「恰好ですぐにわかりますよ」