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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

「試してみてくれ、爺さん」

又平が老人に叫んだ。

「舟が出るかどうか、やってみてくれ」

「斬込め」

半兵衛の声がした。

一人が渡り板へ足をかけた。又平は刀を構えながら、小屋の中へ向って(そこに人がいるかのように)どなった。

「こっちは引受けたから艫のほうを頼む、だがとび込んで来るまで出るな」

渡り板へ足をかけた男は、間合を計って跳ぶつもりらしかった。しかし、足で踏んでみると、板は脆くて、それだけの力を支えられそうもない。――やむなく、その男は刀を抜いて、静かに板を渡り始めた。

残る四人は、舟へ飛び移る隙を覘っているようであった。だが、約九尺の間隔と、みるかげもなく古り朽ちている舟のようすとで、飛び移る決心はなかなかつかないらしい。

渡り板の上の男は、板の半ばまで来て停った。揺れている板が止ったら、そこから跳躍するつもりだろう。

又平は一歩さがった。

このあいだに、友吉老人はもやってある綱を切り、深く突立てた棹に掴まって、(それは川波で舟が流されることのないように、深く固く舷側に添って突立ててあった)全身の力で押したり引いたりしていた。

「そこだ、ゆけ」

半兵衛が叫んだ、叫びながら、彼はひそかに抜取っていた小柄を、又平に向ってはっしと投げた。