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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

「それがそう簡単ではなくなったんだ」

こう云って徹之助は日光街道への急布令のことを話した。しかし休之助は闘志満々で、

「ではちょうどいい、その知らせを兼ねて、太田の代りに私がゆきましょう」

それがいいだろうと徹之助も思った。ただ、万三郎とはすぐ喧嘩をするので、その点だけ気懸りであるが、まさかこんな場合に兄弟喧嘩をすることもないだろうと、そのことは口には出さなかった。

まもなく小出辰弥が来た。

長屋のほうには太田嘉助と梶原大九郎がいた。添島と村野は役所があるので、これらには梶原が連絡することにし、五人で本拠を移す相談を始めた。

すると、そこへ「河原中也さま」といって、若い娘が徹之助を訪ねて来た、という取次があった。

「袋物屋の八重といえばわかる、と申しておりますが」

取次がそう云うのを聞いて、徹之助はすぐに思い出した。

林市郎兵衛の許婚者で、紀伊家の小田原河岸の下屋敷へ奥女中に入った娘があり、そこに押籠められている徹之助の妻と、連絡をとるような手筈になっていた。

「よろしい会いましょう」

徹之助は頷いた。

五

八重というのは躯も顔もまるまるとして、若さと健康に満ちあふれているような娘であった。