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ふうりゅうたいへいき
風流太平記
山本 周五郎
「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页
はいという八重の返辞を聞いて、向うの部屋から休之助が出て来た。彼は兄のふきげんな眼つきに構わず、八重に向って自分を紹介し、すぐにその話へ割込んだ。
「失礼ですがそのかよという女はどんな女ですか」
「おまえ知っているのか」
徹之助が訊いた。
「心当りがあるんです」
休之助のいきごんだ調子に、八重はちょっと口ごもった。
「わたくしよく存じませんのです、二度ばかり遠くからお姿を見ただけなのですから」
「大体の感じを云えませんか」
「上背のある、――たいそうきれいで、好みの派手な方のように拝見しました」
休之助はちょっと考えて、
「それはどういう身分の女なんです、奥勤めですかそれとも家臣の娘ですか」
「よくわかりませんのですけれども、お屋敷の方ではなく、よそから来て、身を寄せているというふうに思われました」
その女は屋敷の中に住居をもらって、若い侍女を二人使って住んでいる。その近くに侍長屋があり、そこに十四五人、やはり紀州家の者でない、浪人ふうの男たちがいる。その人数はいつも殖えたり減ったりするし、常にかよと行動を共にしているらしい。――八重は、かれらが「朱雀調べ」に関係のある人間ではないかと思い、それとなく注意していたのであるが、昨日、その浪人たちの話すのをふと耳にした。