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ふうりゅうたいへいき
風流太平記
山本 周五郎
「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页
真崎稲荷の一丁ばかり手前に堀があり、そこへ漕ぎ入れると、左手に寮の板塀が続いて、舟を着ける踏段があった。文吉が先にあがり、くぐり戸をあけて、それから提灯に火を入れて三人を中へ案内した。
夜のことでよくわからないが、かなり広い母屋のほかに、茶室造りの離れがあった。三人はひとまずその離れに荷包を入れたが、旅支度をしている休之助は、そのまま出立することにした。こういう場合のために、若年寄の判を捺した旅手形が作ってある(もちろん偽造であるが)。それを御用箱に納めて、必要なときに出してみせれば、夜中の旅行はもちろん、どこの伝馬問屋でも馬を借りることができた。
「これで水戸街道へゆきます」
休之助は兄に云った。
「旅絵図でみると水戸街道の土浦から下館まで十里足らず、そこから結城まで僅かな距離ですから、馬の都合さえうまくいけば、明日の夕方までには着けると思います」
「注意のうえにも注意してゆけ」
徹之助は念を押して云った。
「途中はもちろん、葛西屋という宿もどうなっているかわからない、油断してしくじると取返しがつかぬぞ」
「貯蔵庫を発見したら焼き払いますが、いいでしょうね」