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ふうりゅうたいへいき
風流太平記
山本 周五郎
「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页
伴れの七人はどうなったか、呼ぼうとして立ちあがると、ふいに向うの闇がうす明るくなって、おどろおどろと異形のものの姿が現われた。
弥助は恐怖のあまり立竦んだ。
――われはこの谷の山霊なるぞ。
異形のものはそう云った。
――この谷に近づくな、近づく者は生きては帰れぬ、命が惜しくばこの谷に近づくな。
この世のものとは思えないぶきみな声で、同じことを三度も繰り返して云い、そのまますっと煙のように消えてしまった。
「そのとき弥助は逆上していただで、はっきりした覚えはねえが、白い衣みてえなものを頭から冠り、白い長い髯を胸まで垂らして、自然木の杖を持ってたようだ、と云ってましただ、七福神の絵にある寿老人みてえだった、と云ってたそうでごぜえますよ」
その話を信じない若者たちがいて、なお三回ばかり組になってでかけたが、異形のものの云ったとおり、一人も帰っては来ないし、死躰も発見されない、ということであった。
「そんなことも、あるものなんだな」
休之助は呟くように云った。
「お武家さまには信じられねえだかね」
「いや、――」
口を濁して、休之助は炉端から立った。
「山霊の声というのをよく聞いてみようか」