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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

こう云って静かに眼をあげ、眩しそうに万三郎を見あげた。

「休之助にいさまは、あなたのほうへもわたくしのことを、書いておあげになったのではございませんでしょうか」

「ええ、そ、そうです」

万三郎はすっかりまごついて、へどもどしながら云った。

「貴女のことは兄から、いろいろ手紙に書いて来ました。それはあれなんですが、しかし、それよりもですね、――ちょっと当惑するんですが、その」

「なにを御当惑なさいますの」

相手はあやすような眼でこちらを見た。

――やい万三郎、おちつけ。

彼はこう自分をどなりつけた。迂濶なことを云う場合ではない、おちつかなければならない。五日まえに来た「つな」は、油断をするなと警告していった。

「つまり、――というのが」

万三郎は吃りながら云った。

「私は五日まえに江戸へ着いて、すぐに浜屋敷へいったんですが、甲野さんは火事をだして、みなさん焼死なすったと聞いたんですが」

「あら、でもそれは、――」

と女はけげんそうな眼をした。

「そのことは御存じではなかったんですか」

「そのこと、――というと」

「火事をだしたことも、一家が焼死したことも、みんな敵の眼をあざむくためにした計略だということをですわ」