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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

万三郎はそこに強い好奇心を惹かれた。おそらく、ほかのときだったら、なんとしてでもかれらの話を聞き出したであろう。だが今はそんな時間は少しもなかった。

――人のどころか、今はおれのほうがもっと複雑で、もっと緊迫した状態じゃないか。

彼は自分に苦笑した。

おちつき場所が定るとすぐに、万三郎は町の「大めし」へでかけていった。古木邸のようすを知るには、虎造と会っている必要があるし、急に会わなくなれば、疑われる惧れもあった。

虎造は必ず「大めし」へ来た。昼飯と晩飯と二度のときもあるし、晩飯だけのこともあった。どっちの場合にも、晩飯のときには十時過ぎまで飲んだ。

――おい炭屋。

と呼んでいたのが、「炭屋のあにい」になったが、いまでは、

――なあきょうでえ。

というように変った。

もちろん勘定を万三郎が払うからである。酒も肴も、好きなだけ飲んで食って、それを万三郎がきれいに払う。さからいもしないし、いやな顔もしなかった。

虎造にとっては夢のようであり、すっかり心服したようであった。立てないほど酔ったときには、

――済まねえが、裏門まで伴れていってくんねえ。

などと云った。