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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

三尺の土間には蓑や合羽が掛けてあり、四帖半だけ畳の敷いてある部屋も、納戸がないとみえ、隅には夜具がつくねてあるし、脱ぎっ放しの仕事着だの、なにかの包だのがごたごたして、足の踏み場もないようなけしきであった。

縁の欠けた火鉢に、火を熾して待っていた若い下男は、虎造が帰るとすぐに出ていった。

「一杯やってゆけ」

虎造はその若者に云った。

「たなごの焼きたてでぐっと一杯どうだ、温たまって寝られるぜ」

「有難えがまたにしよう」

と若い下男は答えた。

「明日の朝が早いから、諄いようだが火を頼みますぜ、此処は火を禁められてる処なんだからね、いつもと違って預かった物があるんだから」

「わかってるよ、うるせえな、念にや及ばねえってことよ」

若い下男は去った。

虎造はうるさいからと云って、雨戸を閉め、火鉢に炭を足して、たなごを焼きはじめた。毎年やり慣れているのだろう、古い竹串の束を出し、魚を五六尾ずつ刺して、金網の上で焼くのである。

万三郎は酒の燗をつけた。

酒は一升徳利が二本用意してあった。それを燗徳利に移し、火鉢(一つしかないので)からおろした大きな湯沸しで燗をするのである。