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ふうりゅうたいへいき
風流太平記
山本 周五郎
「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页
「すると、江戸から来たあの娘さんは、その押籠められている人と知り合いなのかい」
「そいつはわからねえが」
虎造は首をぐらぐらさせた。
「とにかく、押籠められている人のために、江戸から来たことは慥かだと思うんだ」
「娘さんは一人で来たのか」
「いんや、お侍が五人いっしょに来た」
それから虎造は、その五人の侍のことを話したが、なかの一人は明らかに石黒半兵衛のようであった。睨まれるとぞっとするくらい凄みのある顔だとか、無反の長い刀を差している、などという点から、半兵衛にまちがいないと思われた。
「このあいだまた荷が着いたが、それでもう江戸から送るのは終りだそうだ」
虎造の舌はもつれ始めた。よっぽど酔って来たらしい、眼もたるんできたし、躯ぜんたいが危なっかしく揺れていた。
「おらたちにゃあ、なにが起こるかわからねえ、誰にもなんにもわかりゃしねえ、だがなにかがおっ始まる、なにかどえれえ事がおっ始まるぜ、うん、こんな面妖なことばかりあるところをみると、それに相違ねえと思うんだ」
同じようなことを繰り返し云っていたが、そのうちにどしんとうしろへぶっ倒れた。
「虎あにい、どうしたんだ」