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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

ぎゅっと握った拳が、ぶるぶると震えた。

「おれは花田の兄から注意をされている」

と彼は呻くように云った。

「三郎といっしょになったら気をつけろ、よく気をつけて喧嘩をするな、どんなことがあっても喧嘩はならん、そう云われて来た、――だからがまんしているんだぞ、さもなければきさまなんぞはり倒してくれるんだ」

「そうでしょうさ」

万三郎はふんといった。

「休さんは強いですからね、さぞみごとにはり倒せるでしょうよ」

「はり倒せないというのか」

「ためしてみてもいいでしょう」

「云ったな、きさま」

花田徹之助が心配したとおりである。この二人は仲が良いくせに、昔からいっしょにいると一日として喧嘩の絶えたことがなかった。年が明けたから休之助は二十八歳、万三郎も二十六になる。それでいてこのありさまだから、徹之助が案ずるのも無理はなかった。

「云いましたとも」

万三郎は片方の腕を捲った。

「私だってこれで侍のはしくれですからね、はり倒すなんて云われて黙ってはいられません、やってみようじゃありませんか」

「よし、堪忍が切れた」

休之助はそう叫んだ。

万三郎はぱっと脇へ跳んだ。

休之助がとびかかったのである。