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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

万三郎は静かに答えた。

「一期の大事というような瀬戸際には、たいていの人間がたいていな事はするものですよ」

「おまえは楽天家だよ」

「私は人間を信ずるだけです」

「朱雀事件の一味をもか」

「また始まりそうですな、よしにしましょう」

万三郎は苦笑した。

「もう放してしまったんだし、私にだってめどはあるんですから、どうかこんどは怒らないで見ていて下さい」

「おれはおれの方法を守ってもらいたかったんだ」

休之助が弟に与えた案は手ぬるいものであった。伝次を伴れていって、なかまのものが見廻りに出て来たときそいつを捕える。次にまた同じようにして、順々に二十余人を観音谷からおびき出す、というのであった。

「わかりました、あやまります」

万三郎はあっさり低頭した。

「ときに、荷駄はどんなぐあいですか」

「半刻ほどまえに五駄いった」

休之助はそう云いながら、右手をあげて谷の下のほうを指さした。

「あれにまた提灯の火が見える」

「見えますね」

「この谷を登って来るようだが、あれもおそらく荷駄に違いない」

「こうなると張合が出ますね」

万三郎は笑って云った。

「では代りますから、どうかいって休んで下さい」