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ふうりゅうたいへいき
風流太平記
山本 周五郎
「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页
重い口でそんなことを云った。
「とにかく話を聞こう」
つなが持って来た茶を与え、万三郎は二人をそこへ掛けさせた。
弁天谷を登って、その奥を北に入った観音谷に、貯蔵所はあった。そこはもう頂上に近く、三段ばかり登ると加波山神社の境内になる。谷といっても水はないし、崖を切拓いて五百坪ばかりの台地を造り、荒壁の貯蔵庫が三棟、ほかに番士たちの住む丸太小屋が三棟ある。周囲は松林だし、谷あいになっているから、ちょっと見たくらいではわからない。
番士たちはぜんぶで三十人くらいいる、侍が二十人ほどで、あとは小者ふうであるが、二日まえに、侍が五人と若い女(かよであろう)が来た。
誘拐された若者たちは二十七人で、初めは殺すと脅され、ついで、味方の役に立てば侍にしてやる、幕府の仕事だから金にも不自由はさせないと云って、各自に五両ずつ与えられた。
幕府の仕事で、侍になれる。
こんなうまい話はないし、金五両という、夢のような大金を貰ったので、若者たちはみなのぼせあがった。
――一生の運が向いて来た。
そう思って、なんの疑いもなく、かれらの云うままになった。
「あんまり棚から牡丹餅すぎるんで、なかには渋る者もあったですが、百姓をしていたでは一生かかっても五両なんて金は持てねえだし、つまりは金にひかされてうんといってしまったですよ」