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ふうりゅうたいへいき
風流太平記
山本 周五郎
「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页
彼女はわれ知らず云ってしまったのである。その役目の危険さは大きい、まさしく虎穴に入るというべきだ。
――そんな処へ万三郎さまをやりたくない。
そう思ったのが、つい知らず口に出た。したがって、彼に反問されたとたん、本心をみやぶられたような感じで、眼があげられなくなったのである。
――ははあ、そうか。
と万三郎は万三郎で頷いた。
「わかりましたよ、斧田のほうがいいという理由がわかりましたよ」
彼は挑むように云った。
「貴女はあそこにかよがいるので、それで私をやりたくないんでしょう」
「まあ、万三郎さま」
つなは吃驚した。彼女はそのことに気がつかなかった。かよのことはふしぎに思いださなかったので、万三郎にそう云われると、ああそうだったと思い、すっかりあがってしまった。
「理由はそれに相違ない、しかし貴女には、私がそんなにだらしのない人間にしかみえないんですか」
「いいえそうではございません、決してそんなわけで云ったのではございませんわ」
「じゃあ理由はなんです」
彼は昂然と云った。これまで再三、彼女から云い負かされているので、今こそ仇を取ってやろうと思った。
「云って下さい、ほかに私でいけないという理由があるなら聞こうじゃありませんか」