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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

万三郎は全身の血が止るように思った。

「これが兵たちの小屋か」

と武士が云った。

「中を御覧なされますか」

「そうさな、明日にしよう」

かれらは庫のほうへ歩きだした。万三郎はほっと息をついた。

――江戸から来たやつだな。

かれらを見送りながら万三郎はそう察した。おそらく紀伊家のしかるべき身分の者だろう、それもいま此処の番頭たちの応対ぶりでは、相当以上の者のように思われた。

――休さんならわかる筈だ、休さんは浜屋敷にいたしこんどの策謀の本拠は浜屋敷らしいから。

万三郎はそう思った。

「だが休さんにはうっかり饒舌れないぞ」

彼はそう呟きながら、折から月が雲に入ったのを幸い、すばやく庫のほうへと近寄っていった。

六

万三郎は夜明け前に小屋へ帰って来た。

休之助は寝ていたが、つなはもう起きて、監視から戻って来る斧田のために、朝の食事の支度をしていた。

「まあ、まあよく御無事で」

つなはかまどの前からとび立つように、こう云いながら出迎えた。

よほど心配していたのだろう、くいいるような眼で彼を見あげ、頬を赤くした。万三郎はゆうべあんなことを云われたので、冷淡にしてやろうと思ったが、そうはできなかった。