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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

「野郎えらそうな口をきくな」

相手の少年が歯を剥きだした。

「金杉で放り込まれた茄子なら金杉の海で浮いてろ、この頃ちょいちょい見かけるが、冬木河岸はおれっちの繩張りだ、誰に断わって繩張りを荒しに来やあがるんだ、云ってみろ、誰に断わって来やあがるんだ」

「くそをくらえ」

半次がせせら笑った。

「深川の蜆っ食いが洒落れたことをぬかしゃあがる、冬木河岸が誰の繩張りだろうと、道は天下の往来だ、用があって通るのに、いちいち断わるなんてちょぼ一があるか、笑あせるな」

「深川の蜆っ食いだって、云やあがったな野郎」

「云ったらどうした、てめえたちゃあ年中ぴいぴいで、蜆ばっかり食ってやがるから口まで蜆っ臭えや」

「てめえのされてえのか」

「のせるもんならのしてみろ」

半次は片腕を捲った。色の黒い細っこい腕であるが、当人はいっぱしのつもりらしい、小さい躯で仁王立ちになり、片方の肩をつきあげた。

「甲子の火事で親父もおふくろも死んだ、おれが死んでも泣く人間はいねえから、やりたければ遠慮なくやってくれ」

「この野郎、深川っ子がどんなもんだか知らねえな」

「知りたくもねえやそんなもの」

「やっちまおうじゃねえか」