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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

「五両なんていう莫大もねえ金だの、侍にしてくれるって話からしておかしかっただな」

そう云う者もあった。

もともと疑惧はあったので、説明されればすぐに理非の判断だけはつく。判断がつけば「謀反人の同類」ということの恐怖に圧倒されるのが当然であった。

そこでかれらに万三郎が釘を打つのである。

「おまえたちのほかは、もうみんなが承知しているんだ、もし番士に密告でもするようなことがあるとすぐにわかるし、わかれば生きてはいられないぞ」

「それでははあ、もうみんな合点しているですか」

「残っているのはもうおまえたちだけだ、――但し、なかま同志で話すことはならない、万一にも番士どもに気づかれては水の泡になる、この事に関する限り、ひと言でも他の者と口をきいてはならんぞ」

ちょっとでもなかま同志で話したら、その場で殺すことになっている、というふうに、思いきった表現で釘を打った。

かれらの中には怯える者もあった。

五晩かかって約十四五人説きふせたし、みんな忠実に万三郎の注意を守るようであった。

こうして六晩めに、意外な出来事が起こったのである。

その夜は晴れていた。

三日ばかり薄曇りが続いたあとで、きれいに晴れあがった空には、十七夜くらいの月が皎々と耀いていた。