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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

「まあそうどならないで下さい」

万三郎は微笑しながら、ようやく兄のほうへ振向いた。

「休さんはいつも私のする事が気にいらない、なにかというとどなりつける、いまもそうだ、入って来るといきなり、またか三郎、――という始末だ、まったくこいつにはうんざりしますよ」

休之助は凄い眼つきをした。

「またどなるんですか」

万三郎は肩をすくめた。休之助はけんめいに怒りを抑えつけ、できる限り穏やかな、むしろあいそのいい調子で云った。

「さあ、――頼むよ三郎」

万三郎はにっと笑った。休之助の閉口したようすに、すっかり気を好くしたのである。彼は坐り直して云った。

「花田の兄さんがやったんだそうですよ」

「兄上がどうしたって」

「こうなんです、――」

万三郎は話しだした。

聞いているうちに、休之助は眼をきらきらさせ、拳を握り、顔を赤くし、前へ前へと乗り出した。

「そうか、そうか、伊豆さまを動かしてくれたか、やっぱり花田の兄上だ」

休之助は息をはずませた。

「おれが別れて来るときには、あまり頼みになりそうもない話だったが、――しかし、紀州家で国許へ査察使を出したというのはどういうことだ」