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ふうりゅうたいへいき
風流太平記
山本 周五郎
「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页
万三郎が坐り直して云った。
「この男とかよさんが戻らなければ、貯蔵所は騒ぎだすに違いありません、今夜のうちにやってしまうほうがいいと思うんですが」
「できればそのほうがいい」
「伝次と秀にはそう云ってあるんです、柵も抜いてあるし、焼打ちの支度もできているでしょう、かれらのなかまも殆んど味方に付くし、事を起こす手筈も教えてあります」
「――おまえ残るか、三郎」
「なんですって」
「みんな死ぬわけにはいかん」
休之助はきっぱりと云った。
「この渡辺蔵人は生き証人として、江戸まで送らなければならない、朱雀調べには初めての、しかも重大な人間だ、彼を送るために誰か残らなくてはならない」
「冗談じゃない、いや冗談じゃないじゃない、そいつは私の役じゃありませんよ」
万三郎はやっきとなった。
「それは休さんか、いや斧田さんがいいでしょう、斧田さんでなければつなさんか誰か」
「まあ待って下さい」
斧田又平が云った。
「それはいま定めないでも、焼打ちが済んでからでもよくはないでしょうか」
「しかし貯蔵所には侍が二十人、小者が十人ほどいるんですよ」
と万三郎が云った。
「仕掛けるほうに分があるとしても、三人と三十人ですからね、伝次たちのなかまが二十余人味方に付いてくれる筈だがどこまで頼みになるかはわかりませんからね」