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ふうりゅうたいへいき
風流太平記
山本 周五郎
「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页
「休さーん、休さーん」
彼は叫び続けながら、夢中で左に右に走りまわった。
――不人情なことをしちまったなあ。
彼は心のなかでそう呟いた。自分だけ助かって、兄を見殺しにしたようなものではないか。火薬に火がつく、と叫んだ筈である。爆発するから伏せろともどなった。自分では慥かにそう警告したのであるが、しかし、休之助が死んだとすると心が咎め、なんとも不人情なような気がしてならなかった。
「いませんかー、休さーん」
万三郎は谷尻のほうへ走った。
すると壊れた板片のごたごた重なっている処から、自分を呼ぶ声がするのを聞きつけ、はっとしながら駆け寄った。
「どこです、休さんですか」
「此処、こっちです、――」
板片の下から手が出た。
「斧田ですが、甲野さんも此処にいます」
万三郎はああと云い、手早く板片を取りのけた。斧田又平が起きあがった。
「兄はどこです、だめですか」
「いや、ただ頭を、――」
又平がそう云いかけたとき、
「花田万三郎、やりおったな」
と云う声がした。
万三郎はぱっと、左へとびあがって振向いた。そこに石黒半兵衛が立っていた。
半兵衛も爆発でやられたらしい、躯に傷はないようだが、顔の半面が黒く焦げ、着物はずたずたにひき裂け、さんばら髪になっていた。