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ふうりゅうたいへいき
風流太平記
山本 周五郎
「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页
――ぬけ参りとは感心な娘さんだ、あたしが箱根までいっしょにいってあげましょ。
やさしそうな顔をしてそう云うの、それがとてもやさしそうで、あたしにもおまえさんぐらいの孫娘がある、こうして見ていると他人とは思えない、なんていったわ、――そうすると、あたしより先にお爺さんのほうが信用しちゃって、どうかぜひ伴れていってくれ、自分からも頼むなんて云っちゃったの」
「善い人ってものは疑うことを知らないからねえ」
「その明くる日、いっしょに木賃宿を立つと、まだ藤沢の宿を出るか出ないうちに、おまえさんは躯がまだ本当じゃないから、駕籠に乗っておいでと云って、あたし駕籠に乗せられました、まる一日半も水ばかり飲んで歩いたあとで、まだ疲れも治らないし、安心もしたんでしょう、揺られているうちについうとうとと眠ってしまったんです」
どのくらい経ってからか、駕籠がおろされたので眼がさめた。出ろというので駕籠から出てみると、ごたごたしたうす汚ない町はずれの、小さな一膳めし屋の前で、
――少し早いけれど午飯にしよう。
と云われるまま、老婆といっしょにその店へ入った。
食事をしているあいだに、中年増の女があらわれて、おちづの機嫌をとるように、いろいろ話しかけたり、身の上を聞いたりした。