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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

の名にふさわしいものであった。

逞しい四十男(ついに名はわからなかった)が躯じゅう爪痕だらけになり、

――このあま、殺してくれるぞ。

などと逆上し、しまいにはぐるぐる巻きに縛ったままで置かれた。

するとおちづは縛られたままで、気持の悪いのをがまんして、着物から夜具から畳まで汚した。そのために、家の中がすっかり臭くなったくらいであった。

――しようがない、叩いて売っちまおう。

かれらは諦めた。

うまく仕込んで高く売るつもりだったらしい。が、とうてい手に負えないとみて、十日ばかりすると他の男に売り渡された。

「それが鬼六だったのね」

「そうじゃあないんです、鬼六は五人めにあたしを買った男なんです」

「まあ五人めだって」

松吉姐さんは口をあけて、吃驚したようにおちづを見た。

「そのあいだずっと暴れとおしたのかえ」

「片っ端から傷だらけにしてやったわ」

おちづは片手で、左の乳房をそっと押えた。

「がりがりひっ掻いてやるし、噛みつくし、蹴っとばす殴る、――みんなあたしの十八番ですもの、三人めのやつなんか耳へ噛みついて耳たぶを食い切ってやったわ」

「――呆れたひとだこと」