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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

と大きな声で云った。そして、渡辺蔵人の脇差を袋に入れて持ち、兄たちの前を立った。

「――つまらないもんだ」

彼は玄関のほうへ出ながら、いまいましそうに呟いた。

「――三男坊になんか生れて来るもんじゃない、ぜんぜん頭ごなしなんだから、――いつかひとつ、がんと休のやつをぶん殴ってやりたいもんだ」

廊下の曲り角で、ばったりつなとゆき合った。彼は慌てて独り言をやめ、にこにことあいそ笑いをした。

「いま帰るところです」

つなは黙っていた。

「これからちょっとひと働きやるんですよ、深川の方面なんですがね、この、――いや、さきほどは失礼しました」

つなは冷たい眼で見あげた。なにがですか、と云うような眼つきである。彼はどぎまぎし、頭を掻きながらおじぎをした。

「済みません、用が終ったら弁明に来ます、あの誤解だけは解いてもらいたいですからね、なんでもないことなんですから、――ではまた」

つなは黙っていってしまった。万三郎はべそをかいたような顔で、しおしおと玄関のほうへ去った。

蕨めし

一

牡丹色の、すばらしく美しい雲が、頭上から西の空へかけて、ひろがっていた。

黄昏の街が、その夕焼け雲のために、いっとき華やかに明るく、家も人も影をなくして、夢幻的なけしきをあらわしていた。