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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

侍は吹矢の筒で半次の顔をさした。ひどく狎れ狎れしい、人好きのするようすである。彼は跼んで、まだ暴れている雀を拾いあげ、羽根を縫っていた吹矢を抜いた。

「そら、よく見てくれ、針には一滴の血も付いちゃいないぜ、羽根を縫っただけなんだ、これでも可哀そうか」

彼は雀を二人に見せた。侍の手の中で、雀は不安そうに身をもがき、嘴で侍の指を噛んだりした。半次もおちづも、そっと手を伸ばして、この雀に触ってみた。すると雀の赤い色が指に染まりそうに思われた。

「ほんとだ、傷もねえや」

半次は感心して頷いた。

「どうしてこんなふうにできるんだろ、小父さん吹矢の名人かい」

「まあそんなもんだ」

侍は笑いながら云った。

「それより坊主、おまえこんな処に遊んでいていいのか、誰かに使いを頼まれているんじゃないのか」

「使いがなんだって」

半次はぎょっとして、眼の色を変えた。侍は云った。

「そこの屋敷の河原という人のところへさ、なにか使いを頼まれて来たんだろう、そうじゃないのか」

「おめえ誰だ」

「そんなに驚くなよ」

侍はまじめな顔になった。

「おまえのほうでは知らないだろうが、おれは河原さんの下役だからおまえを知ってるんだ、大事な使いの途中で遊んでいちゃだめじゃないか、それに、――そこにいるその子はどうしたんだ」