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ふうりゅうたいへいき
風流太平記
山本 周五郎
「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页
「わかっています、これまでは私もそう思ってまいりました」
とつなは云った。
「でも今はそうは思えませんの、万三郎さまはいつか仰しゃいましたわ、いかなる大事も人間を無視してよいものはない、死に当面している人間を見棄ててもよいような事はこの世にはない筈だ」
つなは眼を伏せて、しみいるような声で続けた。
「わたくし初め、その言葉をみれんだと思いました、第一義のまえには親を滅してもよいと思っていました、でも今はそうは思えません、万三郎さまの仰しゃったことが本当だと信じます、人間の命を軽んずるところからは本当の大事は果せないと信じます」
「よろしい、そうお信じなさい」
休之助は冷やかに睨んだ。
「そう信ずることは貴女の勝手だ、われわれは貴女の信念を変えようとは思わないし、そんな時間もない、――兄上、人を集める使いを出しましょう」
「まあ待て、――」
徹之助は静かに制した。
八
徹之助は、いきり立つ弟を、制止して、
「そのおちづという娘をこれへ呼んでくれ」
とつなに云った。
つなは立っていったが、すぐにおちづを伴れて戻った。おちづは神妙に、かしこまって坐った。
「今日は御苦労だった」