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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

徹之助はもっと苦い顔をした。

「あなたは金を返せばそれで済むとお思いでしょうけれど、あたしは金は金、助けてもらった恩は恩だと思います」

そして、おちづは云い過ぎたと思ったのだろう、ちょっと恥ずかしそうな眼をし、調子をやわらげて云った。

「こんななまいきなことを申上げて、どうぞ怒らないで下さいまし、――あたし、うまく云えないんですけれどもう一つは、あたしも半ちゃんもぐれた育ちですから、お屋敷勤めなんか本当は肌が合わないんです、あたしたちにはあたしたちの性に合ったことをするほうが間違いがないと思うんですけれど、――それでもいけないでしょうか」

徹之助はやや暫く黙っていたが、やがて静かに訊いた。

「おまえ年は幾つになる」

「はい、十五です」

ああというふうに、徹之助は眼を伏せながら太息をついた。

――とんちんかん。

などと云われて、気を悪くしたものの、おちづの言葉は彼の心を打った。あまりに幼稚であり、単純すぎる割切り方であるが、単純なだけに、なにやら「ずばり」としたものが感じられ、いってみれば、躯を張って生きている者のぎりぎりの本音、というふうな印象で、彼にはちょっと抵抗のできないものがあった。