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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

「見たのはそれだけだな」

「はい、――そこからすぐ御殿のほうへゆかれましたがお供の方らしい人が、乗って来た舟の者に向って、

――知らせのあるまで、元船は品川沖から動かさぬように。

と云うのが聞え、舟のうち二はいが、すぐに水門を出てゆきました」

そして、今日は早朝から邸内に厳しい布令がまわり、当分のあいだ、(夜間はもちろん)許しのある者以外はその住居から出てはならない、ということになった。――したがって脱出するには却って好機会だから、今夜か明晩の夜半に、決行するほうがよいと思う。と八重は主張するのであった。

「わたくしそう考えたものですから、此処へ来るまえに、舟のほうへそう申しつけ、いつでも出せるように手配を致させたのですけれど、いかがでございましょうか」

「そういうことなら、思いきってやることにしよう」

「今夜に致しますか、それとも明日の晩がようございましょうか」

「邸内の情勢によるから、今夜と明晩、夜半一時に、こちらから人を乗せて、定めの場所へ舟を着けて置くことにしよう」

「はい、わかりました」

八重はすぐに去ろうとした。それを見て、徹之助は決心したように呼び止め、