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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

「御身分は、――」と小林重兵衛が訊いた。

「戸田家の中老です」

戸田下総守(忠諏)はそのときの甲府城支配である。甲府城は初め城代制、次に親藩の甲府家を設け、さらに柳沢家の所領となったが、享保九年からまた幕府に直轄されて、甲府勤番支配が任命されるようになっていた。

「戸田家御家中の中老をお勤めなさる」

小林はちらと休之助を見た。それから咳をし、胸を反らせながら云った。

「じつは必要があって荷駄の内容を調べたいのですが」

「荷駄を調べる、――」

松野という武士の眼が光った。

「それはどういう理由ですか」

「役目の上の必要からです」

「ばかなことを――」

松野次郎右衛門が声を荒らげた。

「甲府勤番は老中の支配である、そこもとはいかなる職権でさようなことを要求されるのか」

「失礼ですが、――」

休之助が前へ出て、ふところから巡検使の符札を出した。

「私はこういう者です」

相手の顔色が変った。

「老中ならびに大目付から、地方巡検の命をうけて出張して来たのです、おわかりでしょうか」

七

「お役目の点はわかりました」

松野は左右へ眼をくばった。

「しかし、――荷駄を調べるというのは、なにか不審があるからでしょうが、その理由をうかがいましょう」