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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

かよは頷いて半兵衛を見た。それ以上なにも云うことはなかった。半兵衛にもかよの気持がわかったのであろう、にっと微笑しながら、蝮の八兵衛のほうへ振向いた。

「きさま要害山というのを知っているか」

「へえ、知っております」

「そこへ裏からゆく道があるそうだな」

「北原という処から、茶屋越えというのがございます」

「よし、それを駕籠でやれ」

八兵衛は助と顔を見交わした。

「酒手はたっぷり頂いてやる、悪事の罪ほろぼしにもなるだろう、やれ」

「へえ、ようございます」

八兵衛はしぶしぶ承知した。

「その要害山というのが、例の場所なんですのね」

かよはすぐ駕籠に乗りながら訊いた。

「さよう、猿橋で捕えた小者の自白で、そこが本拠だとわかったのだそうです――私は鳥沢の番所まで戻って聞いたのだが、聞きに戻ったために貴女にも会えたわけです」

「ものごとがうまくゆき始めると、なにもかもうまくゆくようになるのね」

「しかし、――ふしぎですな」

半兵衛が感慨ふかげに云った。

「私も貴女も、こんなことになろうとは思わなかった、いや、そうじゃない、かよさんはそうじゃなかった、貴女は初めから花田さんに」