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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

太腿に銃傷があり、そこから多量に出血して、弱っていたのだろう。その出血を怪しまれ、刀を抜いて脱走しようとしたため、捕えられたのであるが、――もし彼が本拠へ逃げ込んでいたとしたら、事態はずっと困難になったろうと思う。

夜襲は極めてうまくいった。

本拠では江戸から来る人数を待っていたらしい。正面から登った岡村隊は、なんの妨害も受けずに山上へ達した。

休之助たち四人は谷の西側から登り、二人の番士を斬って、貯蔵所に火をかけた。

その炸裂で敵は初めて襲撃に気づき、殆んど身支度もせずに斬って出たのであった。

だだだーん。

ひときわ高く、大きな爆発が起こり、空いちめんが閃光のために裂けたように見えた。万三郎は思わず首をちぢめ、ばらばらと崩れる土煙に噎せて咳きこんだ。

「花田さん、どこです」

向うから兵馬の呼ぶ声が聞えて来た。

六

「おーい」

万三郎は大きく答えながら、声のしたほうをすかして見た。

兵馬が壕の中を走って来た。

「あがってごらんなさい」

と兵馬が云った。

「予想したとおりですよ」

「なにがです」

「覆面の怪剣士です、――きっとやって来るって云ったでしょう、つい今しがた現われて、すばらしい手並をみせていますよ」