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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

刃を返して受止めたが、踏み込んだ相手の激しい力に押された。

――しまった。

躰を捻ろうとしたが、そのために却って躰が崩れ、足をとられて転倒した。

やられる、と思った。

刀を上段に振上げた相手の、劈くような叫びと、大きくみひらいた眼と、電光のように閃く刀とが、幻覚のようなすさまじい印象で、彼の上へのしかかって来た。

八

まさに「万事休す」と思った。

上段から打ちおろす刀を、僅かに躱したが、二の太刀は受けきれなかった。

だが、――相手は打ち込んだとみるとたん、ぞっとするような悲鳴をあげて、横ざまにのめっていった。

――どうした。

万三郎ははね起きた。

するとすぐ向うに、覆面の怪剣士が立っていた。万三郎はあっと叫んだ。

「石黒先生!」

だが、怪剣士は燕のように身を翻し、再び乱闘の群の中へと姿を消した。それを追おうとすると、

「待て三郎」

休之助の声がした。竪壕はいいのか、と呼びかけたときから、それまでの出来事を見ていたのだろう、走って来て叱りつけた。

「敵はみんな斬死にの覚悟だぞ、脇目をふるな」

まさに脇目をふる暇はなかった。彼の言葉が終るまえに、兄弟は五人ばかりの敵に挾まれた。