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ふうりゅうたいへいき
風流太平記
山本 周五郎
「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页
「私が付いているからね、なにも心配することはないんだよ」
彼はそう云いながら、膝を寄せて、かよの手を取った。
「もうかよには決して苦労もさせないし、悲しいおもいもさせやしない、どんな事が起こったってきっとかよを護ってあげるよ」
かよは万三郎の膝に俯伏し、彼の手へ、自分の濡れている頬を押当てながら、声をころして咽びあげた。万三郎が片方の手で髪を撫でると、その手も取って、二つの手へ烈しく頬ずりをし、熱い唇を押しつけた。
「――困るよ、かよ」
万三郎はすっかりあがってしまい、胸のあたりが苦しくなった。
「――どうしたらいいんだ」
かよはふいに顔をあげた。そして、涙に濡れた頬を、手の甲で(子供のように)拭きながら笑いだした。万三郎はほっとし、これも誘われて、ぶきように笑いだした。
「困らせてごめんなさい、あまえてみたかったの」
とかよは云って、万三郎をやさしく睨んだ。
「でもあなたって、なんて――」
そう云いかけたかと思うと、急に燃えるような眼つきになり、すばやく立っていって、絹行燈を消した。まっ暗になった寝間の中に、吃驚したような、万三郎の低い叫び声が聞えた。
明くる朝はやく、――