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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

万三郎は舌を巻いた。

――組ませたのは失敗だ。

腰をおとそうとすると、相手はぐっと上手を引きつけた。

手を振ろうとすると下手をこじる、ぐいぐいと寄り身になって緊めあげる。そのままいけば鯖折りという手になりそうだった。

鯖折りというのは、よくは知らないが、反けざまに躯を二つに折られるのらしい。無理をすると背骨が折れてしまうので、ときに禁手にされるほど猛烈なものである。どうしようか、万三郎は冷汗が出てきた。

もちろんこれは長い時間ではない。組んでから呼吸の五つか六つくらいしか経たなかったが、三島がとつぜん叫び声をあげて、

「よせ、禿、やめろ」

と喚いた。

「おれが片づけるから」

万三郎はひょいと腰をおとし、頭を相手の胸へ付けた。反射的な動作であった、なにもわかっていたのではないが、じつはそのときうしろから禿が丸太で殴りかかったのであった。

三島はそっちを見ているからわかった。それで慌てて制止したのだが、おれが片づけるから、――と云い終らないうちに、禿がその丸太を打ちおろした。

がつん! とすばらしく大きな音がした。

その音は三島の頭で起こった。

万三郎が腰をおとし頭をさげたので、三島の頭がその丸太を受止めることになったのである。