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ふうりゅうたいへいき
風流太平記
山本 周五郎
「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页
そこには結婚できる相手という現実的な条件があった。そうして、まもなく万三郎の手紙が来たのである。つなを娶ってもいいという彼の手紙が、かよにどんな衝撃を与えたかは云うまでもあるまい。
孤児であり、甲野に養われている立場のかよは、(概念的に想像しても)つなと対等ではなかったであろう。甲野家の人たちに差別意識はなかったとしても、かよ自身がひけめを感じ、――独りで指をくわえている、というようなことがしばしばだったに違いない。
「――可哀そうに」
万三郎はそう思わずにはいられなかった。
かよが、手段を選ばず万三郎を自分のものにする、と決心した気持はよくわかる。彼自身は今でもつなを貰おうと思っているが、かよの気の毒な立場を考えると、そう決心した気持がいじらしいほどよくわかるのであった。
本当に可哀そうにと思うのであるが、現に当面している問題からすると、かよは明らかに敵であり、邪魔な存在であった。
――これで諦めはしないだろう。
あの口ぶりでは、どうしたって諦めはしないだろうし、「和幸」のことをきっかけに、もっと激しく、もっと執拗になるかもしれない。しかも「朱雀事件」