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ふうりゅうたいへいき
風流太平記
山本 周五郎
「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页
虎造は湯呑に冷酒を注いで、それを飲みながら焼いていた。焼けたのは小皿に取り、塩を付けて喰べる。家の中はたちまち煙でいっぱいになり、脂肪の乗った川魚の焼ける香ばしい匂いが、万三郎の空腹な腹にしみいるようであった。
「燗がついたぜ」
万三郎が徳利を差し出した。
「おれはあんまりやらねえ口だから、虎あにいこっちへ来てくれ、おれが焼き番になろうじゃねえか」
「そうか、それじゃあひとつ」
虎造はすぐに立った。
「冷じゃあやっぱり美味くねえ、こんな晩は熱燗でねえと、――」
「いまの人が預かってる物とかなんとか云ったが」
万三郎は火鉢の前に坐りながら、ごくさりげなく云った。
「このお屋敷じゃあ預かり物もするのか」
「なあにそんなんじゃあねえ」
燗酒を湯呑でぐっと呷って、串焼きの、まだ膏のぶつぶついっているのを、ひと口にこいで喰べながら、虎造はちょっと自慢らしく声をひそめて云った。
「おめえだから云うがな、きょうでえ、この屋敷にゃあ今、わけのわからねえ事がいろいろあるんだぜ、わけのわからねえ、きびの悪いような事がよ」
「おどかしっこなしにしてくれ、おらあこうみえても気の小せえほうなんだから」