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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

「でもそんな理由なんて本当にないのですから、ただふとそんな気がしたまでのことなんですから」

「じゃあ私でもいいんですね」

「それは、もちろん、――」

「もちろんどうなんです」

休之助はにやにやしながら聞いていた。弟のいやに昂然とした態度が、子供じみていて可笑しかったのである。しかし、つなが本当に困っているようすなので、

「いいかげんにしないか、三郎」

と苦笑しながらとめた。

「なにも理由がないと云っているのに、そんなに拘るやつがあるか、それより本当におまえがゆくのなら、あの女に用心しなければいけないぞ」

「休さんまでがそんなことを」

「事実だからいうんだ」

と休之助は遮って云った。

「自分でもそう云っていたが、あの女にはなにか妙にするどい勘がある、おまえがどこへいっても、必ずそこへついてゆくと云った」

「ばかな、みんな偶然ですよ」

と万三郎は唇を歪めた。

三

「いや偶然だけじゃない」

と休之助は主張した。

「偶然ということもあるだろうが、それ以外になにかふしぎな勘をもっている、たとえば、千人の群衆の中に紛れこんでいても、そこに三郎がいれば必ずみつけ出すといったような」

「おどかすのはよして下さい」