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ふうりゅうたいへいき
風流太平記
山本 周五郎
「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页
十
此処へ帰って気分がおちついたために、記憶がはっきりよみがえったものか、「――気にいりの部下を集め女をひきつけて酒宴をしている」と云ったことも思いだされた。
「すると、渡辺蔵人という男が、かよを自分の側へひきつけて、酒を飲んでいるわけだな」
万三郎は独りで呟いた。
「半兵衛の怒りは嫉妬か」
こう呟いて、仰向いて寝たまま大きな欠伸をした。欠伸をして眼をつむったが、ふっとまた眼をあき、
「――半兵衛の嫉妬」
と口の中で云って、ながいこと暗い納戸の天床をじっと見まもっていた。
十
それからのちの五夜――
万三郎は貯蔵所の内部を探る一方で、二十余人の若者たちの説得を進めた。二人または三人ぐらいずつを、ひそかに小屋の外へ呼び出し、伝次から事情を説明させるのである。
――この貯蔵所は幕府のものではなく、謀反人どもの計画であること。
――幕府から隠密に役人が来ていて、近く此処を焼き払うこと。
――そのとき役人に助勢すれば、これまで加担した罪は赦されるように計らうこと。
それだけ話すと彼らの多くはすぐに承知した。
「おらも怪しいと思っていただ」
と彼らは云った。
「お上の仕事に山霊さまの声まねだの、黒装束で見廻りをするだのってことがあるわけはねえだ」