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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

五

あんまり突然だったので、自分が射たれでもしたようにぞっとし、地面の上でばたばたと柔毛を散らしている雀の姿を、茫然と見まもるばかりだった。

「驚いたか、坊や」

こう云いながら、一人の若い侍が、稲荷堂のこっちの大きな椎の木の蔭から出て来た。袴を着けていない、こまかい細縞の袷の着ながしで、刀は一本だけ、素足に雪駄をはいて、吹矢を持っていた。

「どうだ、うまいもんだろう」

侍はこっちへ来た。

五

侍が近よって来ると、おちづがいきなり前へいって叫んだ。

「小父さんどうしてこんなひどいことをするの、可哀そうじゃないの」

「そうだ、ひでえことをするぜ」

半次も赤くなってどなった。

「なんにも罪もねえものを、それにこんなに小さな、赤くって可愛らしい雀をよ、どういうわけで殺したりするんだ、小父さん」

「おいおいよせよ坊や」

侍はにこにこ笑った。笑うと眼が細くなって、子供のように愛嬌のある顔になった。

「おまえだっていま石を拾ってたじゃないか、石を拾ってこの雀に投げようとするのを見ていたぜ」

「おいら、ただ、――なにってやんでえ、おいらただ威かそうとしただけだ」

「隠すなよ坊主、赤くなったぜ」