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ふうりゅうたいへいき
風流太平記
山本 周五郎
「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页
三
そう云って隣りのほうへたち去った。
「どうした半次」
徹之助は少年に云った。
「用はなんだ」
「用じゃないんです、お嬢さんからちっとも知らせがないんで、もしかしたらこっちへ来ちゃったのかと思ったもんで」
「つなから沙汰がない」
徹之助は訝しそうに云った。半次はこくっと頷いた。
「あの晩増六から帰ったきりで、そのときはちゃんと送っていったんだけど、それから一遍もなんの知らせもないんです」
「なにか変ったようすはなかったのか」
「べつにそんなことはありません。こっちへ来てるんでもないんですか」
徹之助は首を振った。
「いったいどうしたんですか」
わけがわからないので、万三郎が訊いた。徹之助はなにか考えているようであったが、やがて顔をあげて云った。
「つなは榊原主膳という、宇田川町の旗本の家に身を寄せている、榊原は休之助の友人なんだ、そこで大久保邸の休之助と連絡をとることになっていたのだが」
「消息を断ったというのですね」
万三郎は坐り直した。
「私がいってみましょうか」
三
「いやそれはいけない」
徹之助は首を振った。
「榊原は休之助の友人ということで、やっぱり敵に監視されている、つなは火急のばあいだったし、ほかに適当な家がなかったので、とりあえず身を寄せたのだが、外部からうっかり近づくわけにはいかないのだ」