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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

六

先頭に「甲府城御用」という札を立て、裏金の塗笠に背割り羽折を着た武士が二人、馬上でうたせて来た。槍が二人、あとはみな徒士で、七頭の荷駄を護るような隊形をつくっていた。

彼らが宿を出たとき、――

番所支配の小林重兵衛に休之助と太田嘉助が付添い、番士十人が左右に分れて、この行列の先頭を塞いだ。

そのとき万三郎と兵馬は、橋をうしろにして、与石藤十郎の一隊と共に、行列の退路を断つように位置していた。したがって、先頭のほうの出来事はわからない。

「おそらくひと荒れしますよ」

万三郎は兵馬を慰めるように云った。

「かれらにとっては最後の機会ですからね、甲府の貯蔵所へたてこもって、挙兵の一戦に参加しようとして来たんですから」

「そうあってもらいたいですな」

「此処で手を束ねて捕えられる筈はありません、噛みついて来ることは必定ですよ」

「まあ見ているとしましょう」

そのとき先頭では、――

塗笠の武士の一人が馬からおりて、小林支配と問答をしていた。武士は年のころ四十あまりで、五尺七寸ばかりの逞しい躯つきだった。眉毛が濃く、眼がするどく口髭を立てていた。

「私は戸田下総守の家臣で、松野次郎右衛門という者です」