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ふうりゅうたいへいき
風流太平記
山本 周五郎
「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页
徹之助は珍しく機嫌のいい表情になり、八人の者に手紙の内容を説明した。
つなは誘拐されたのではなかった。
彼女は浜屋敷から運び出される荷を見て、それが正確に本邸へ入るかどうかを慥かめたのである。そうして、案の定、その荷の大部分が紀尾井坂へはゆかず、千住から日光街道に向うのを認めた。
つなは迷った。
――増六にいる万三郎にも用があった、万三郎を井伊家下屋敷へ案内しなければならないのである。
――もう一つは自分の行動を知らしてないことだ。
どうしようかと迷ったが、目前の出来事のほうが緊急を要すると思えた。
――この事からなにか大きな秘密を探り出せるかもしれない。
彼女はおおしくも決心した。万三郎には深川から使いがゆくだろう、また、無断で榊原を出ても、こっちの行先をつきとめてから連絡をつければよい。そう決心してそのままつなは荷駄のあとを跟けたのであった。
千住を出てから、その荷駄には紀州家御用の標が立てられた。休之助がいったように、日光廟へ奉納の品だという名目で、馬七頭に大きな唐櫃が五棹あった。どちらの荷も重量があるとみえ、櫃のほうは一棹に八人つき、半刻ごとに交代して運んだ。