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ふうりゅうたいへいき
風流太平記
山本 周五郎
「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页
――しかしやけになることはない、この甲野にいい娘がいるんだ、おれの女房の妹で、名前はつな、年は十八になる。縹緻は姉よりいいし、気だてはやさしいし、おまけに小太刀の名手ときている。どうだ、おまえこの妹をもらう気はないか。
そんなふうに書いて来たこともあった。
万三郎はその手紙には心をひかれた。遠い土地に孤独な生活をしていたためかもしれない、また若い年齢のためかもしれないが、つなというその娘のことが、深く印象に残って、いつかしらひそかなあこがれをさえ感じるようになった。
――その人をもらってもいいです。
と彼は兄に返事を書いた。
――けれども長崎まで来てもらうわけにはいかないでしょう、勤番が解けるまで待ってくれるでしょうか。
そう書いたこともあった。
すると三十日ほどまえのことであるが、その兄から急飛脚の手紙が来て、彼を驚かした。それは、すべての手続きを棄ててすぐに江戸へ来い、という文面であった。
(役所のほうは花田の兄が手配をする、理由もこちらへ来てから話すが、非常に急を要するので、この手紙が着きしだい即刻そちらを出発するように)
そう繰り返してあった。