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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

彼は肚をきめた。

「伴れというのは侍だな」

「お三人さまですわ」

なにをとぼけているのかといいたげに、女は彼をせきたてた。万三郎は軒下で停って、手早く若干の銭を彼女に握らせた。

「いつもつまらない悪戯をする連中なんだ、今日はこっちで驚かせてやるからな、三人のところへいって、私がどうしても寄らなかった、ずいぶん先へいってしまったと云ってくれないか」

「それでどうなさるんですか」

「向うがどうするか見てやるのさ、つまりこっちで笑ってやろうというわけなんだ、うまくやってくれ、頼むよ」

まさかでたらめだとは思わない、女は心付を貰ってもいるし、こっちの片棒を担ぐつもりかなんぞのように、心得顔に頷いて、店の中へ入っていった。

万三郎はすばやく、路地口へ身を隠した。

道は人で賑わっていた。しだいに明るくなってくる両側の燈影が、往来する旅客や、馬や、客を求める宿の女たちの、やかましく叫んだり走ったりする姿を、いかにも宿場の夕暮らしく、もの侘しげにうつし出していた。

茨木屋へも数人の客が入った。

――どうしたか。

万三郎は苛々しはじめた。

かなり時が経ったので、やっぱりなにかの間違いだったのかと思い、路地から出ようとすると、店先でさっきの女の声が聞え、すぐに、旅装の侍たちが三人出て来た。