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ふうりゅうたいへいき
風流太平記
山本 周五郎
「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页
まだどこかに子供らしい感じの残った、そして強情らしい顔つきをしていた。休之助によく似ていたが、休之助よりも愛嬌があって、さも喧嘩が強そうにみえた。
「――でもはっきり見えない」
つなは眼をつむった。
印象はかなり鮮やかなのだが、思いだそうとするとぼやけてしまい、ぜんたいの顔はまるでとらえようがなかった。
「どうかあの方でないように」
眼をつむったまま呟いた。
「もしかしてあの方だったら、どうか御無事に逃げて下さるように」
それは祈りのように切実な呟きであった。そのとき階段に足音がし、ちらちらと手燭の揺れるのが見えた。
「この二階ですね、わかりましたわ、ええ大丈夫」
そう云う声が聞えた。相手はあの老女らしい、聞えたのも女の声であった。それも若い女の、華やいだ甘え声である。つなはちょっと首を傾げた。
階段を登る足音がし、手燭の光りが明るく近くなった。そうしてすぐに、若い女がそこへあがって来た。
つなははだか灯が眩しいので、眼を細めながらそっちを見た。女も格子の近くまで来て、手燭をあげながら中を覗いた。
それはかよであった。
「つなさんしばらく」
かよは艶然と微笑した。