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ふうりゅうたいへいき
風流太平記
山本 周五郎
「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页
三
「それあ願ってもねえが」
「本当のこった、そのうちおれのところへ来てもらおうじゃねえか、汚ねえ馬小屋みてえなところだが、そこなら悠くり飲めるし、銭も安くて済むからな」
「だっておれなんぞがいっちゃあ、お屋敷でやかましくはねえか」
「うん、いまはだめだ」
虎造は仔細らしく頷いた。
「ちょっとわけがあって、いまは知らねえ者を入れることはできねえが、もう五六日もすれば片がつくだろうから」
「なにかとりこみ事でもあるのかい」
「とりこみ事ってえんでもねえんだが」
万三郎の眼が光った。しかし彼は自分を制した。もうひとこと訊きたいのだが、警戒心を起こさせてはなんにもならない。
「じゃあその片がついたら、いちど虎あにいのところへ呼んでもらうかな」
と万三郎は誘うように云った。
「そのときはひとつ、二三升も下げてゆくとしようか」
三
結城の町を東にぬけると、鬼怒川の流れがある。その河畔を、水戸街道からそれて、二丁ばかりのぼった河岸に古い伝馬船に屋根をかけた、あぶなっかしい舟小屋が繋いであった。
斧田又平と万三郎とは、十日まえからそこに住んでいた。
そこはもと渡し場であったが、数年まえから廃止になったそうで、渡し守をしていた友吉という老人が、渡し舟の上に小屋を造って、独り住んでいたのである。