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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

山の声

一

「やるなら徹底的にやれ」

休之助は笑って頷いた。そして、そのまま、表門から出て行った。

山の声

一

休之助が土浦を出たのは、明くる日の午前十時ごろであった。

土浦の伝馬問屋では、彼の示した切手を疑うようすで、

――いちおう番所へ問い合せるから。

と云った。

大目付御用遠国鉄砲改、という切手の名目や、若年寄の連判など、かれらは見るのが稀なので、半ば恐ろしく半ば信じ兼ねるといったようすであった。

――ばかなことを申すな。

と休之助は高圧的に出た。

――急を要する御用だからこそ、若年寄連判の証文を出したのではないか、番所へ問い合せるならあとのことにしろ、馬だ。

かれらは御用馬を出した。存分にとばせそうな馬である、休之助は余分の駄賃を与えて出発した。

下館までの道の半ばは、筑波の山麓に沿っている。晴れてはいたが風の強い日で、殆んど真向から、それこそ正真正銘の筑波颪が、膚を切るように吹きつけて来た。

小田という処で昼食をし、半刻ほど馬を休ませたが、この時間が悪かった。

北条へかかる少し手前で、うしろから追って来た六七騎の侍たちに、声をかけられた。そこは筑波山への登り口に当っているので、初めは筑波山への遠乗りの連中かと思った。