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ふうりゅうたいへいき
風流太平記
山本 周五郎
「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页
――理由は、松倉屋が二代にわたって運上(税)をごまかしていたというので、総額二万八百両という、桁外れにばかげた数字をあげた。もちろん払えるわけがない。そのとき当主であった息子夫婦は牢へ入れられ、全財産を没収されたのであった。
「伜夫婦はまもなく牢死しただが、たぶん毒でものまされただろうさ、運上をごまかしたなんて根も葉もねえことを白状させたで、生かしちゃおけなかったに違えねえ」
「――それで老人は」
「この山ん中へ逃込んだだよ、あの孫娘を伴れてな」
「――なんと無残な」
「わしも当座は血が凍っただ」
老人は淡々と云った。
「古木には結城の御領主も頭があがらねえ、近在の者は甚兵衛を殿さまと云っているだ、この土地じゃあしようがねえ、江戸へでも訴えて出ようかと思ったりしただ」
「どうしてそうしなかったのだ」
「訴える先を考えただよ」
老人は渋い笑い顔をみせた。
「訴訟する先は役所だ、相手は役人だ、――こう気がついたからやめただよ、わしの家を潰したのは役人だ、古木がどんなに豪家でも、古木ひとりの手ではそんな無道な事はできねえ、役所があり役人があって、これと結託したからこそできたことだ」