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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

――いまは危険です。

又平はずぶ濡れのままで、がちがち震えながら云った。

――いま荷駄を跟けることは、かれらの張った罠へ、こっちからわざわざ踏込むようなものです。

又平は万三郎の身を案じて、ずぶ濡れのまま二刻も捜しまわったのであった。友吉老人も待っているというので、そのときはついに諦めたのであった。

結城の町から南へ、二十町ばかりゆくと、辻堂という村がある。家数にして十五六軒の貧しい農家が、枯田のなかにさむざむとかたまっている、という小さな部落で、そこに友吉老人の古い知人がいた。老人は二人をそこへ伴れてゆき、自分もいっしょに寄食することになった。

――おらが身を持崩して歩いているとき、この人の(と万三郎を指さし)親御さまに大恩を受けただよ。

友吉老人はそう紹介した。

――ひょんな事で、いま役人衆に追われていなさるだが、決して迷惑はかけねえ、おらが首に賭けて保証するだから、ひとつ内証で世話をみてあげてくれ。

その家の主は承知した。

主は五十ばかりで、名を伝右衛門といい、まだ二十三四歳の若い妻がいた。親子ほど年のはなれた夫婦で、なにか事情があるらしい、渋いような顔をした、口の重い男であったが、友吉老人の頼みを聞いて、ぶすりとこう答えた。