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ふうりゅうたいへいき
風流太平記
山本 周五郎
「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页
「もう飲めねえ、わけがわからなくなっちまった、もうだめだ、腹の中までたなごっ臭くなりゃあがった、もう寝るぞ」
「そのままじゃあしようがねえ、おめえ寝衣になって」
「うるせえ、放っといてくれ」
万三郎は手を放した。
虎造はそのまま眠るようである。手足をばたんと大きく投げ出し、たちまち鼾をかき始めた。万三郎は隅につくねてある夜具を取って、虎造の上へ掛けてやった。
それから火鉢の火を埋め、暫く虎造のようすを見ていた。
――どうするか、やるか。
――絶好の機会だぞ。
彼はそんな自問自答をした。
だがすぐに決心したらしい、着物の裾を捲り、行燈を消して、土間へおりて草鞋をはいた。そこに掛けてある蓑を着、笠を冠ると、音のしないように入口の戸をあけた。
かなり強い風といっしょに、雪がさっと吹き込んで来た。
彼は戸を閉めたまま、その軒下からじっとあたりのようすをうかがった。どこに一つ灯の光りも見えず、人のけはいも感じられなかった。万三郎は自分に云った。
「――よしゆけ、三郎」
七
万三郎はまず裏門のようすをみにいった。
番小屋はあるが、灯も洩れてはいず、人の声もしない。おそらく寝ているのであろう。