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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

三

に関する限りそのこと第一義で割り切っていて、些かでも脇にそれた問題は冷酷にはねつける。少しも容赦しないので、訊く気にはなれなかった。

辻堂の家へ帰ると、又平は伝右衛門と友吉老人に向って、自分たちが此処を立退くことを告げ、厚く礼を述べた。

休之助もぶっきらぼうではあるが、礼を云ったうえ、若干の金を包んで二人にやり、伝右衛門の若い妻は、寒さ凌ぎにといって、自然薯入りの雑炊をもてなしたりした。

「いま何刻であろう」

休之助は頻りに刻を気にした。

九時となり、十時を過ぎたが、万三郎の帰るようすはなかった。

「十二時頃になるときもありますから、少し横になられたらどうですか」

又平がそう云うと、休之助は黙って首を振ってから、独り言のように呟いた。

「じつに尻の長いやつだ」

三

又平は失笑しそうになった。

――じつに尻の長いやつだ。

いかにも休之助らしい。なにも万三郎は自分の好きで飲みにでかけたわけではない。古木邸のようすを探るために、あまり飲めもしないのに、虎造などという下男の相手をしているのである。

――二人は顔が合うとすぐに喧嘩だ。

いつか花田徹之助がそんなふうに云ったようであるが、これでは喧嘩になる筈だ。